日本国内で、年々増加する「国際結婚」。その一方で、離婚の増加もパラレルであるはずなのですが....。
しかし実際は、「国際結婚」と「離婚」に対する偏見と差別が二重に被さるため、「国際離婚」のケースはそのほとんどが影を潜めざるをえません。
もともと結婚の継続は、同国人間であれ、異国人間であれ、どのような結婚でもあっても難しいもの。
「国際結婚」の場合はさらに、言葉や文化/習慣の違いに加えて、日本での就労といった、およそ3つの重要な事柄が互いの関係性の育成や生活を維持する上での障害になります。国際結婚関連のノウハウ本が多数流通している現状から察しても、この結婚の形がいかに困難を抱えているのかは、容易に想像できることでしょう。それゆえ、離婚当事者や離婚を考えている人たちは、「難しさを覚悟した上で決断したことなのだから、泣き言は通用しない」とばかりに、ひとりで苦しみを抱えることになるのです。
離婚後の生活が果たしてこの日本社会で可能なのか、二カ国の血をひく子どもを自分一人で育てることができるのかなど、悩みは尽きません。しかし、その悩みを第三者に打ち明ければ、「外国人なんかと結婚するからだ」といった「それみたか」反応が返ってくるかもしれず、これらの事柄を誰にも相談できない事態は、さらに当事者を孤独と苦しみへ追いやることになります。
以上の事柄は、「国際離婚」した私の経験上から書き記しました。
幸いに私の場合は、離婚後の10年以上を今日まで、まわりの理解に支えられながら、また子どもと共に成長もし、偏見や差別をそれほど受けることもなく、この国で生きることができました。(1) ところが、ある日、仕事で、米国人俳優と離婚した合気道師範の日本女性を取材中(2)、彼女の「誰にも相談できなかった」という話を聞いて、突然、私の過去の苦しみが蘇ったのか、思わず落涙しそうになったのです。
その時です、私が、過去の傷がまだ癒しきれていないことに気づいたのは。 “このような思いを抱えているのは、私や彼女だけじゃないはず、きっと同じよう な経験を持つ人たちがまだまだ日本には存在するのではないか”。そう咄嗟に思った 私は、同じ経験を当事者間で語り合ってみたいと、
「国際離婚を語りあう会」をスタートさせることに決めました。
とはいっても、この会は始まったばかりです。
まずは、当事者間で語り合いたい。語るだけでも、孤独から脱し、少しはラクになるかもしれません。
そして今後は、これからメンバーに加わってくださる方たちと、会で何ができるのか、会をどのように運営するのか、といった事柄を一緒に考えていきたいと願っています。
子育てのこと、子どもの国籍のこと、経済的なこと、離婚の成立方法、あるいは離婚した相手と子どもとの付き合い方など。個々の問題を語り合うともに、互いの知恵を出し合いながら、それぞれの人生を肯定的にとらえる方向で支え会いましょう。
なお、参加される方は、外国人男性と離婚した/現在離婚を考えている、日本に住む女性に限ります。
会の設立趣旨に賛同する方は、どうか、下記のアドレスまでメイルをください。メイルでのやり取り後、大阪府下の公共女性センターでメンバーが集まっての、定例会を持ちたいと思っています。
このホームページは会が進行するにしたがって、順次、その模様をレポートする形で書き換えすることにします。
1999年9月
松尾寿子
(1)<偏見や差別をそれほど受けることもなく>とは、多分、私の性格がいささか楽観的(=鈍感)で、「自分と他人が違うのは当たり前」といった人間観がそう思わせているのでしょう。私の二人の子どもたちは、母親とはまた違った意見を持っているかもしれません。
(2) 記事は1999年9月22日発売号「婦人公論」に掲載。
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